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CONTENTS on line vol.83 2008 ★ Autumn  

トップの素顔

紳士服から新たな境地へ。50年目の旅立ち

株式会社AOKIホールディングス[8214] 代表取締役社長 青木 擴憲株式会社AOKIホールディングス

株式会社AOKIホールディングス 代表取締役社長 青木 擴憲

Top Profile

1938年9月、長野県生まれ。父親の営む質屋が挫折し、その借財を返済するため、行商の道へ入る。58年、株式会社洋服の青木を創業し、65年7月紳士服1号店を開設。76年8月アオキファッション販売株式会社(現・AOKIホールディングス)設立。以後、ファッション、ブライダル、エンターテイメントと事業を拡大させ、89年5月には東証2部、91年9月には東証1部、92年2月には大証1部に株式を上場。2008年3月期で連結売上高1,307億円となるAOKIグループを築く。

「事業ポートフォリオ経営」によって
「高度サービス企業」へ本格的な脱皮

紳士服の世界で生まれたAOKIグループは今、「生命美の創造」という事業コンセプトのもとに、大きく生まれ変わろうとしている。すでにこの事業コンセプトに基づき、「アニヴェルセル・ブライダル」「エンターテイメント」という新しい事業分野へと進出。まさに紳士服という枠から大きく飛躍し、多角的な事業展開によって、人々のゆとりある人生の実現を強力にサポートしていこうとしているのである。創業から半世紀、第2のステージへと飛び出した今こそ、舵を握ってきた青木擴憲社長の求心力とグループ各社のトップの経営力が、ますます問われる局面になっている。まさに、青木社長の“トップの素顔”に、多くの熱い視線が集まっているといえる。

多くの経営者が注視するバイタリティと高い視座

紳士服小売りという枠を超え、ブライダル、エンターテイメントといった新分野へ、着々と事業拡大を果たしている、AOKIグループ。2008年4月には、経営・管理と事業執行の機能を分化し、それぞれの役割・責任の明確化を目指して、純粋持株会社体制へと移行した。
激変する小売業の世界で、また、同業者間で繰り広げられてきた激烈な競争のなかで、これほどの成果を手にしてこられた背景には、1958年の創業以来、確固たる信念と強烈なリーダーシップを発揮してきたトップの存在がある。

創業者として、また代表取締役社長として、長い間AOKIグループを先導してきた青木擴憲氏は、社内では「1000番(せんばん)」の通称で呼ばれている。これは事業草創期、年商1000億円の目標を掲げたチャレンジ精神に由来している。しかし、今日までの50年の歴史は助走期間であり、ここからの50年こそが、本番。蓄えた経験とスピリットをフルに活かし、人々のゆとりある人生に広く、深くコミットしていく存在を目指して、さらなる展開に注力していくという。

そのバイタリティと高い視座には、追尾する若きベンチャー経営者はもちろん、経済界の重鎮もまた、一目置いている。そして、それを築いてきた本人の履歴にも、高い関心が寄せられている。

3店舗すべてマイナスからのスタート

「父は米穀や生糸、肥料などを扱う事業をしていたこともあって、長男の私にも、事業家として大きく育ってほしい、という気持ちがあったようです」

だからこそ、言葉であれこれ教えるのではなく、悪いことは悪いと“ゴツン(拳)”で教える。おかげで青木社長は、小さい頃から自分で考え、自分で行動するクセが身についたという。

そんな父親も、戦後に始めた質屋を軌道に乗せることは難しく、結局、青木社長が高校生になった頃に立ち行かなくなってしまう。親戚の助力で路頭に迷うことはなかったものの、この経験こそ、青木社長が生まれて初めて遭遇した強烈な試練となった。
「月に一度、雪のなかだろうが、風の強い日だろうが、自転車で借金を返しに行くんです。肉体的にも、精神的にも非常につらいものがありましたが、それこそが私に、長男としての責任の大きさ、そして経営の厳しさを教えてくれました」

成績は申し分なかったものの、大学進学はあきらめ、家にあった質流れ品を扱う行商をスタートさせた。そのうち扱う商品を、量が多くて18、19歳の若者でもわかる洋服、スーツに絞るようになる。
7年間の行商を経て、65年、地元・篠ノ井駅前に紳士服1号店を開店。「株式会社洋服の青木」を設立する。しかし、商売はまったく振るわず、継続的な赤字体質。多くの売れ残りが発生し、倒産の危機に見舞われることもたびたび。

「食べるために始めたビジネスでしたが、何としてでも成功するんだと、必死に勉強を続けました。そんななかで、チェーンストアこそ小売業の未来像だと、成長を目指して店舗を3つまで増やしたのですが、まったく軌道に乗らない。まさに“マイナス”からの出発でした」

成功の秘訣は あきらめずやり続けること

苦境に立つ青木社長を見て、ある人が長野駅前の好物件を紹介してくれた。区画整理事業で2年間、空くことになった土地だという。青木社長は「これしかない」と、71年11月、背水の陣で同地に店舗を開いた。その思いが天に届いたのか、長野駅前店は見事に大当たり。それまで3店で8400万円という年商が、一気に2億400万円にまで伸び、開業以来初めての経常利益を出すことができた。

「ピンチの時こそ勉強しなければならない。そうすれば必ず活路は見出せるし、成功をたぐり寄せられる。とにかくあきらめない、やり続けることこそ大切だということを、この時学びましたね」

ようやく訪れた起死回生。通常なら、一息ついて、力を蓄えていきたいところだろう。しかし、そこで立ち止まらないのが、青木社長である。「生きるためのビジネスは終わった、次は社会に何ができるのかだ」と、経営理念を前面に打ち出した展開へ、大胆に舵を切った。
「この時考えた経営理念は3つ。『社会性の追求』『公益性の追求』『公共性の追求』というもので、これは現在でもAOKIグループに脈づいています」

「社会性の追求」とは、当時の初任給で1着しか買えないスーツを4着買えて、毎日着替えられるようにする。それが、社会に貢献する活動になるということで、まずはスーツの流通革命を誓った。「公益性の追求」とは、適正利潤を確保し、それを税金、配当、社員への報酬として還元しようというもの。「公共性の追求」とは、ビジネス以外でも世のなかのためになることをしようというものであった。
「成功したら社会に恩返ししようと、弟の寶久(現・副社長)と、父の位牌の前で誓ったことが、背景にあります」

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