
最高益も、いまだ道半ば。
ゴールは戦略投資でグローバルに強くなること
自ら先頭に立って、妥協することなく果敢に取り組んできた分社・持株会社制への移行は、「選び抜かれた多角化」を実現し、最高益を連続更新するだけの企業体質を作り上げた。しかし、「今はまだ道半ば」と蛭田社長は言う。それは、なぜか。
「分社化というのは手段でしかありません。その手段を使って達成しようとする目標があるわけですから、それが達成されるまでは、改革もゴールに到達したとはいえない」
では、蛭田社長が目指しているゴールとはどういうものなのか。
それは、2段階に分かれている。第1段階は、「分社・持株会社制により、自主自立の経営体制を確立し、キャッシュフローを稼ぐ体質に転換する」というもの。これはすでに前中計の「ISHIN-05」の期間中に企業価値創造の源泉であるフリーキャッシュフローを大幅に改善し、財務体質もさらに強化されたことで、確かな成果をあげている。
そして第2段階、最終のゴールは、「総合化学業界のなかで最も強固な財務体質を活かした思い切った戦略投資によって、本来持っている強みを活かしてグローバルに事業を拡大し、グループ全体の価値を上げていく」というものだ。
「1990年代の当社は、グローバル型事業の売上げ比率が40%程度にとどまっていましたが、それを2010年度までに60%に高めようとしています。水処理用のろ過膜、あるいはリチウムイオン二次電池のセパレータ、エレクトロニクスや医療機器などの高付加価値事業にこそ、非常に高い成長ポテンシャルが秘められています」
旭化成は、現在2010年度を最終年度とする中期経営計画「Growth Action-2010」を進め、戦略投資による積極的な事業の拡大・成長を追求しているが、その初年度の2006年度に、2008年度の中間目標である営業利益1250億円、当期純利益650億円を上回る業績を、前倒しで達成している。その成果を踏まえ、2007年4月に蛭田社長は「2015年に企業価値を倍増する」という新たな目標を設定し、それを実現する新たな成長戦略を策定する5つのプロジェクトチームを発足させた。
このプロジェクトチームは12月末までの9カ月間に実行計画としての答申をまとめ、2008年度の予算からその計画を織り込み、またそれにふさわしい実行体制も整備するという。 プロジェクトの対象事業は電子材料新事業、膜分離系新事業、石油化学系事業のグローバル拡大、電子部品事業の拡大、医療関連新事業としている。
「投資は意思決定をして、実際に設備投資を行い収益を生むまでには3〜5年のタイムラグがある。したがって旭化成が2011年度以降も成長路線を歩むためには、今からそのアクションをとる必要がある」
旭化成は90年代の苦しい時代にも、6円配当を継続し、2004年度からは2006年度の12円という倍の水準まで毎年増配してきた。配当性向も高まっている。「継続的増益により毎年継続的に増配することが目標だ。2007年度も1円増配して13円とする計画であり、今後もその姿勢で経営にあたっていく」と蛭田社長は言う。楽しみにしたい。
(IRマガジンvol.78 2007年夏号)







