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IR MAGAZINE トップの素顔 先駆者の大地
先駆者の大地 2004年春号 Vol.65
 

会社に勘定奉行がやってくる
株式会社オービックビジネスコンサルタント

歌舞伎役者の中村京蔵氏を起用した財務会計ソフト
「勘定奉行」のTVコマーシャル


高価だった受注ソフトウエアを汎用品としてパッケージ化したことで、国内企業の大多数を占める中堅・中小企業に圧倒的に支持されている財務会計ソフト「勘定奉行」。

日本の会計業務にコンピュータによる変革をもたらしたオービックビジネスコンサルタントの 成功の要因とは、何だったのか。

1995年11月22日深夜

  1995年11月22日深夜。全国の家電量販店で、閉じられたシャッターの前に長蛇の列ができていた。翌23日の午前零時とともに発売されるウィンドウズ95を待つ人々の列である。ウィンドウズ95はマイクロソフト社が発表したOS(オペレーティング・システム)で、これをきっかけとしてパソコンは急速に普及し、マイクロソフト社はOS市場を独占していった。しかしこの日、長蛇の列を見ながら快哉を叫んでいたのはマイクロソフト社だけではなかった。オービックビジネスコンサルタントの社長、和田成史もまたそのひとりだったのである。

マイクロソフトとの出会い

  大学卒業後、公認会計士の資格を取得した和田は80年12月、会計事務所を立ち上げ、経営者向けに会計コンサルティング業務をスタートさせた。学生時代から共に公認会計士を目指し、ほぼ同時に3次試験に合格した妻と二人三脚のスタートだった。ちょうどその頃、マイクロソフト社のプログラム言語Basicが初めて日本に紹介された。知人からそのことを伝え聞いた和田は、会計とコンピュータシステムを融合させることを考え始める。70年代後半から、企業の経理業務には確かにコンピュータ化の兆しが見え始めていた。しかしこの潮流は、まだまだ大きな問題点をはらんでいた。
  問題点とは何か。それを理解するためには、コンピュータとはそもそもどういう仕組みで作動しているのかを知らなければならない。ここでいったん、コンピュータの基本的な構造について説明しておこう。コンピュータそれ自体は、機械が詰まったただの箱である。ここに、オペレーティング・システム(OS)と呼ばれる基本ソフトを組み込んで、初めて命が吹き込まれることになる。人間の体にたとえれば、命令を理解するための言葉と、それを伝達し動作に移すための神経系の信号がここで与えられたということである。しかしこの段階ではまだコンピュータは機能しない。OSの上に、動作の方法を規定したアプリケーション・ソフトと呼ばれるソフトを組み込まなくてはならない。いわゆるワープロソフトや通信ソフト、計算ソフトなどがそれである。カメラが写真を撮る道具であり電子レンジが食品を温める道具であるように、コンピュータはこのアプリケーション・ソフトによって、ワープロソフトを組み込めばワープロとして、通信ソフトを組み込めば通信機として、計算ソフトを組み込めば計算機として機能するようになる。冒頭に記した、ブームを巻き起こしたウィンドウズ95は、コンピュータに最初に組み込むOSである。しかしパソコン普及前夜であった当時は、こうしたコンピュータの基本概念はまだ浸透しておらず、ブームに乗ってウィンドウズ95を買い求めたもののパソコンを持っていないために使えないということを、買ってから知ったユーザーも少なからずいた。ウィンドウズ95とともにパソコンが急速に普及するまで、人々のコンピュータに対する認識は今とはずいぶん違ったものだったのである。

汎用ソフトの開発を目指して

  さて、話を70年代後半に戻そう。経理・会計業務にコンピュータ化の兆しが見え始めた当初の大きな問題点とは何だったのだろうか。経理・会計業務にコンピュータを導入するには、そのためのアプリケーション・ソフトを組み込む必要がある。しかし経理・会計業務には企業ごとのやり方があり、それに対応して個別にアプリケーション・ソフトを作成する受注生産であったため、コンピュータ本体の普及にソフトウエアの生産が追いつかないという現象が起こっていた。しかも受注生産ソフトはコストも高く、国内企業の圧倒的多数を占める中堅・中小企業が経理業務をコンピュータ化するためには、価格が大きな障害になっていた。問題点とはこれである。和田はここに着目した。今後パソコンによる企業経理の合理化が進展するためには、受注ソフトではなく、経済性に優れ、量産可能な汎用ソフトの開発が不可欠と考えたのだ。こうして和田は、80年12月12日、ビック・システム・コンサルタント・グループを東京都千代田区に設立し、日本初のプログラム・ジェネレーター「日本語汎用プログラムプランナー8」の開発にとりかかった。コンピュータ・コンサルティングの仕事で関わったオービックもこの着想に賛同し、その資本参加を得て、翌81年には商号をオービック・ビジネス・コンサルタント(95年にオービックビジネスコンサルタントに商号変更)と変更し、本社を東京・新宿の高層ビル、新宿三井ビルの18階に移転。和田は、経理・会計業務のプロフェッショナルとしてのノウハウを活かし、財務会計、給与計算、販売管理などの業務用パッケージソフトの開発を本格的に開始したのである。

消費税対応に乗り遅れる

  会社設立当初はソフトの開発に没頭したが、その間にも運転資金は底をつきそうになり、資金繰りに苦労する日々だった。しかし最初に開発した表計算汎用プログラム「プランナー8」の独占販売権を沖電気工業に1億円で売却することができ、その1億円を運転資金にして次のソフトの開発に挑んだ。そしてその運転資金も残りわずかとなった83年、その後ヒットシリーズとなる「奉行シリーズ」の基となったパッケージソフト「TOPシリーズ〈財務会計〉」を開発。このソフトがヒットして、オービックビジネスコンサルタント、通称OBCの名はしだいに知られるようになっていった。
  事業はようやく軌道に乗り始めたかに見えたが、やがて次の壁が立ちはだかる。89年4月に消費税が導入された際、OBCはその対応版ソフトの開発で他社に出遅れてしまったのだ。開発途中に人為的ミスが連続したことと、開発担当者と営業部門の意識の乖離が原因だった。運転資金の問題も解消し、順調に思えたOBCであったが、人材の開発という面ではまだまだ未成熟だったのだ。この時から和田は、教育による組織の変革に乗り出す。一人ひとりのスキルアップを最大限に支援する制度を立ち上げ、開発の技術者にも当事者意識を植えつけるために営業やマーケティングを経験させる研修を実施した。そして、社員が自らの意思で選択でき、公平なチャンスと発言の機会を与えられる「オープン&フェアの精神」を徹底する体制を作り上げていった。この変革は功を奏した。社員たちは常に成長を目指し、OBCは絶えずスキルアップを続ける人の集団へと確実に変わっていった。そして同じ頃、パソコンの世界にも巨大な変革の波が押し寄せようとしていた。冒頭に記したウィンドウズ95の発売である。

ウィンドウズ95への対応

  パソコンは現在、アップル陣営とウィンドウズ陣営に大きく分かれているが、オフィスの事務処理用として大多数を占めているのはウィンドウズ系のパソコンである。その歴史は、81年、米IBM社が「IBM PC」というコンピュータを発売したことに始まる。同年、マイクロソフト社がOSとしてDOS(ディスク・オペレーティング・システム)を開発、IBM社のコンピュータに搭載されて「IBM PC DOS」として発売された。さらに、マイクロソフト社はDOSを自社ブランドで「MS-DOS」として発売し、ここからIBM以外のメーカーもIBM機と同じOSを持ったパソコンを生産する、いわゆるIBM互換機の時代が始まる。
  DOSはコマンドと呼ばれる文字列をキーボードから打ち込むことによってコンピュータに指令を出していたが、いちいちコマンドを覚えなければコンピュータを動かすことができず、まだ大衆的な広がりを見せるには至らなかった。そこでマイクロソフト社が新たなOSとして開発したものがウィンドウズであった。ウィンドウズは文字列ではなく、イラストで視覚的に表現されたアイコンによって指示を出すもので、使い勝手は格段に向上した。92年に発売されたウィンドウズ3.1はパソコンの標準OSとして定着し、現在のウィンドウズ隆盛の基盤を築いた。しかしこの頃まではDOSのインターフェイスの見かけを変換しただけで、ウィンドウズといっても実体はDOSであった。ところが、ウィンドウズ95の発売によって、OSはDOSからウィンドウズへと大転換し、これをきっかけとしてパソコンは一気に普及していくことになる。
  この時、OBCはすでに組織の変革を終えていた。急速に力をつけてきた社員たちの努力によって、93年にはOBCの名を世間に知らしめるきっかけとなった財務会計ソフト「勘定奉行」をはじめとする奉行シリーズを発売。その後、他社に先駆けてウィンドウズ95対応版のソフトを発売し、これを起爆剤に一気にシェアの拡大を成し遂げた。消費税への対応では失敗した和田であったが、もともとマイクロソフト社の技術に感銘を受けてコンピュータの世界を志しただけにウィンドウズ95への対応は素早く、業界を驚かせたのであった。

LANからNETへ

  その後、対象となる業務も広がりを見せ、財務会計ソフト「勘定奉行」に加えて、給与計算ソフト「給与奉行」、販売管理ソフト「商奉行」、仕入在庫管理ソフト「蔵奉行」など、「奉行シリーズ」は今や企業の基幹業務全般をカバーできるシリーズにまで成長した。このシリーズは中堅・中小企業向けに開発された低価格のパッケージソフトであることや、それを制作するOBCが企業会計に精通したコンサルティング集団であることが顧客から高い支持を受け、その年間販売本数は4万本を超え、中堅・中小企業向けの基幹業務パッケージソフトとしては驚異的な売り上げ本数を誇っている。今やほとんどの企業にパソコンは普及しており、パソコンがなければウィンドウズ95を買い求めても使いようがないことを知らない人は希少だ。
  オフィスのコンピュータの環境は、まず、コンピュータを1台ずつ単独で使用するスタンドアロンと呼ばれる形態から始まり、そこからクライアント/サーバ、つまり情報を蓄積し管理するサーバと、その情報を呼び出して活用するクライアントと呼ばれるコンピュータ端末をネットワークでつないだLAN(Local Area Network)環境へと進化。10年の歳月を待たずして、コンピュータ環境は劇的な速さで変化を遂げた。それに呼応してOBCも「奉行シリーズスタンドアロン」「奉行LANPACK」を発売してきた。
  さらにブロードバンド環境に突入すると、OBCの製品も、コンピュータシステム上で企業の経理情報や販売情報、生産情報、人事情報などの基幹業務系情報を統合・管理する、統合基幹業務パッケージ・ソフトウエアERP(Enterprise Resource Planning)「奉行新ERP」へと進化した。「奉行新ERP」では、従来のパッケージソフトに、顧客企業が独自にカスタマイズできる機能を一部付与。ブロードバンドを活用することで、子会社や関連会社などの分散した拠点からも瞬時に必要な情報を入手したり、発信したりできるようになっている。これにより経営者は、在庫情報、生産情報から売上情報までを広くリアルタイムで入手し、迅速な意思決定を行うことが可能となった。
  今後もオフィスのコンピュータ環境は、ブロードバンド環境の成熟とともに、インターネット上の情報と社内のネットワークとが有機的に結びつく新たなネットワーク環境へと、進化していく。すでに、マイクロソフト社は「.NET(ドットネット)」という構想を打ち出し、この潮流をリードしようとしている。「.NET」とは、コンピュータに指令を出すアプリケーション言語とWebで使用される言語を同一のものとすることによって、アプリケーション・システムとインターネット上の情報を障壁なくつなげて統合していくための新たなOSである。
  これまでマイクロソフト社の構想と歩みを合わせてきたOBCの製品も、「.NET」構想に対応した次世代ERPソフトでオフィスの基幹業務に大きな変革をもたらす準備を進めている。スキルアップを絶え間なく続け、変化しつづける「人」を作り出す「組織」と、そこから生み出される製品を原動力に、OBCは成長と進化を続けてきた。そして世の中が「.NET」という新たな一歩を踏み出そうとするなか、2004年3月12日、OBCは東証1部という新しいステージに足を踏み入れたのである。





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